【シニアの本棚】『月の立つ林で』:人は再生を繰り返す
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【シニアの本棚】『月の立つ林で』:人は再生を繰り返す

4.5
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『月の立つ林で』 青山美智子

以前読んだ『お探し物は図書室まで』がとても良かったので、それ以来注目している作家さんだ。

お探し物は図書室まで 青山美智子 : ギリギリ年金生活
とある地域のコミュニティハウスの図書室に訪れる5人の人々のお話。お探し物は図書室まで青山美智子ポプラ社2020-11-11その図書室には小町さゆりという司書がいる。 白くて大きい女性、チクチクフェルトに針を刺している、雰囲気に圧倒されてみん...

『月の立つ林で』 青山美智子

5人の主人公の暮らしぶりを描いた連作短編集。

物語の展開

  1. 誰かの朔
    長年看護師をしてきた朔ヶ崎怜花、41歳。師長も近いと思われていた頃、ある出来事があって退職した。
    その後転職先も見つからず、自信を失っていた怜花だが、周りの人との関わりを通して自分を取り戻していく。
  2. レゴリス
    お笑い芸人を目指して上京したが一向に売れず、宅配便会社の契約社員になり細々とお笑いライブを続けている重太郎。
    コンビだった相方はお笑いをやめて劇団に入り、主演を張るようになっている。
    卑屈になり相方を見返したいと思うのだが…。
  3. お天道様
    バイクの修理工場を営む「俺」。娘がいきなり結婚すると言う。
    しかもできちゃった婚で式も挙げないと言うではないか。
    娘とバージンロードを歩くのが夢だったのに。
    おまけに結婚相手は無口で頼りない男だ。すべてが打ち砕かれた。
  4. ウミガメ
    高校3年生の那智。両親は彼女が中学1年の時に離婚し母親と暮らしているが、母が家に帰らないことが多くなり、定期的にお金をくれるだけだ。
    那智はアルバイトをしてお金を貯め、卒業したら家を出ようと思っている。
  5. 針金の光
    ハンドメイドのアクセサリーを通販サイトで販売しているmina。
    初めは趣味程度だったのだが、急に注文が殺到するようになり、もっとアクセサリー作りに専念したいと思うようになる。
    そうなると夫や義母の存在に鬱陶しさを感じるのだが…。
まだ元気いっぱいの我が家の椿

読み終えて

5人に共通しているのはポッドキャストの「ツキない話」を聴いていることだ。
月にまつわる色々な話を聴きながら、それぞれ何かを感じとっていく。

直接ではなくても、彼らの友人や職場を通じて「ツキない話」の配信者も含め、みんながなんとなく、それとは気づかず繋がっている。

そして、それぞれが失いかけていた自分自身を取り戻し少しずつ前へ進み始める、そんな物語だ。

わたしは例によってボーッと読んでいたので、彼らのつながりにぼんやりとしか気づかず「あれ、この人前にも出てきたよね」と慌てる始末。

1回読み終えてから全体を整理し、改めてもう1回読み直した。
読み直してしっかり把握したいと思うほどに、いい作品だった。

これから読まれる方、登場人物の名前と状況をしっかり頭に留めて読まれることをお勧めします。

青山美智子さん、いいなー。
この作品は本屋大賞にノミネートされてるけど、取れるといいな。

ちなみに、ポッドキャストで「ツキない話」を検索してみたのはわたしです。

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