
『デモクラシーのいろは』 森 絵都
森絵都さん、随分お久しぶりだ。
過去に何作か読んでいて、特に『アーモンド入りチョコレートのワルツ』はとても感動したようだ。
「ようだ」って…。
内容は覚えてないんだけど、「キラキラ光って宝物のような、宝石箱の中に大事にしまっておきたいような物語」と、自分の記録帳に残っていた。
今作は今まで読んだのとは少しカラーが違うようで、意外だった(いい意味で)。
内容紹介
1946年11月、日本民主化政策の成果を焦るGHQがはじめた “民主主義のレッスン”。いやいや教師役を引き受けた日系2世のリュウ、この実験を発案した仁藤子爵夫人、生徒として選ばれた個性豊かな4人の女性――それぞれの思惑が交錯する中、風変わりな授業が幕を開ける。希望と不安、そして企み……。
仁藤子爵夫人の別宅で寝起きして民主主義の授業を受けることになった4人の女性。
- 真島美央子
東京生まれで銀行勤めをしていたが、戦後GHQで翻訳の仕事をしている - 近藤孝子
静岡の農家出身で高等女学校卒 戦後は横浜で女中をしていた - 沼田吉乃
小学校卒。結婚しているが、夫は出征し帰ってこないので戦死したものと思っている
戦後は横浜のダンスホールで女給をしていた - 宮下ヤエ
青森県出身、小学校卒。戦後は上野の定食屋で働くも身を売ることもしていた
4人に加えて、彼女たちのお世話をするメイドとして雇われたクニが同じ屋根の下で暮らすことになる。
生まれも育った環境も全く違う4人。
真面目に民主主義を学ぼうと思っている人もいれば、住むこと食べることに困らないという理由だけでやってきた人もいる。
教育係のサクラギは彼女たちの扱いに戸惑い、葛藤しながらも信頼関係を築き、彼女たちを導いていこうとするのだが…。

読み終えて
とても興味深かった。
先日読んだ『かたばみ』と同時代のお話。
テレビ番組『あの本、読みました?』で戦後を描いた小説というので2冊が紹介されていて、読んでみようと思ったのだ。
この作品にも戦後のラジオ番組で街頭インタビューが人気だという描写があり、『かたばみ』を思い出した。

さて、本作について。
いつだったか「日本に民主主義が根付かないのは、勝ち取ったものではなく押し付けられたものだからだ」というような論調の記事を読んだことがある。
「ほぅ、なるほどなー」と納得したものだ。
この作品を読むとますます強くそれを感じる。
初めは自分の頭で考えること、自分の意見を口に出すことに慣れていなかった彼女たちも、徐々にそれぞれやりたいことを見つけて団結していく。
そしてあることを企て実行する姿は微笑ましく、エールを送りたくなった。
しかし、彼女たちは変わったけれど、日本という社会は変わっていないのだ。
それが如実に現れているのが小学校でのモデル授業の場面。
愕然とするサクラギ。
そして、あれから80年経った今も、それほど大きく変わっていないのではないかとさえ思う。
相変わらず自分の頭で考えることなく権威に従っているのではないか。
自分の考えを抑えて同調圧力に屈しているのではないか。
また一方で己の権利、利益だけを追求していないか。
民主主義とは何か。
本当に民主主義社会なのか。
なにか民主主義を曲解してる部分がないか。
そんなことを考えさせられた作品だった。

