【シニアの本棚】仕切り直し『八月の御所グラウンド』
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【シニアの本棚】仕切り直し『八月の御所グラウンド』

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一昨日、あれだけ万城目作品について語っておきながら、いざ感想を書こうと思うとなかなか言葉が浮かんでこないのですが…。

とりあえず、いつものパターンでやってみます。

表題作ともう1篇『十二月の都大路上下ル』が収められています。

物語の展開

◆ 十二月の都大路上下ル

主人公、坂東(サカトゥー)が所属する陸上部は27年ぶりに女子全国高校駅伝のエントリー権を獲得し、都大路を走ることになった。

1年生のサカトゥーは補欠で、先輩たちのサポートをするつもりでややお気楽な気分で京都に乗り込んできたのだが、1人の先輩が体調不良で欠場することになり、急遽絶望的方向音痴のサカトゥーが走ることになる。

当日、彼女が併走する人々の中に見た光景とは…。

◆八月の御所グラウンド

彼女にフラれて夏休みの予定がなくなってしまい京都に取り残された朽木は、友人の多聞に「たまひで杯」という伝統ある草野球大会に参加することを強要される。

場所は京都御所の敷地内にある御所グラウンド。
そこには各チーム寄せ集めの選手たちが思い思いの格好で集合していた。

試合は総当たりで、1日目朽木のチームは楽勝したが、2日目は人数が揃わない。
そこへ運よく同じゼミに所属している女子シャオと、たまたま試合を見にきていた男性が加わり、なんとか乗り切った。

3日目になるとメンバーが3人足りなくなる。
そこへ都合よく昨日の男性が後輩を2人連れてきてチームの救世主となる。
彼らは清潔感あふれる真面目そうな青年だ。

そして、シャオがある不思議な事実に気づき…。
3日目に現れた3人は誰なのか。

読み終えて

◆十二月の都大路上下ル

急遽、2年生を差し置いて代走に選ばれてしまった1年生の「サカトゥー」が頑張るお話。
彼女が選ばれた背景などもほっこりするのだけど、彼女に併走する人々が現れた時には「お、出たか」という気持ちでした。

なんとなく『鴨川ホルモー』のオニに通じるような光景が目に浮かびました。
あそこまで存在感はなかったけど。

サカトゥーと同じ区間を走った荒垣さんとのラストの場面も微笑ましく、気持ちのいいお話でした。

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◆八月の御所グラウンド

やはり京阪電車とか出町柳とか叡山電鉄とか、馴染みのある地名が出てくると懐かしく、親しみを感じます。

あまりスポーツが好きではない朽木が多聞に頼まれて野球チームに参加するハメになるわけですが、彼がやる気になってちょっと熱くなっていくのもよくわかります。

問題は、何気なく現れた3人の助っ人ですが…。
ストーリー自体よりも彼らの状況がとても興味深いというか、切ないというか…。

適切な言葉が出てこないのが歯がゆいけど。
語彙がスッカラカンになっているのを感じます。

ちょっと前に「ブギウギ」で出陣前の学生の前で茨田りつ子が歌った場面を思い出してしまいました。

少しでも早く出征させるために卒業式を9月にしたとか、入学式を10月にして2ヶ月後には出陣とか…。
そんなことがあったのか…。
野球をしたかったんだろうな…と。

「俺たち、ちゃんと生きてるか」という多聞の言葉が身に沁みます。

五山の送り火の翌日、彼らは御所グラウンドに来るのでしょうか。

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今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうぞ、よい1日を!

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