『カフネ』 阿部 暁子
「カフネ」とはポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指をとおすしぐさ」だそうだ。
「頭をなでて眠りにつかせるおだやかな動作」という意味もあるらしいけど、そっちの方がしっくりくるかな。
テレビ番組「あの本、読みました?」で紹介された文章がとても印象深かったので読んでみた。
物語の展開
突然弟の春彦を亡くした薫子。
死因は自死ではないというが、なぜか彼は遺言書を残しており、相続人を両親と薫子、そして元恋人のせつなに指定していた。
物語は、薫子が弟の遺言を伝えるためせつなと待ち合わせをしている場面から始まる。
弟を亡くして悲嘆に暮れている薫子。
彼女自身も長い不妊治療のあげく夫から離婚を切り出されてどん底の生活を送っていた。
薫子は一度春彦と一緒に家に来たせつなに対していい印象を持っていなかったのだが、あることがきっかけで2人は家事代行サービスのボランティアをすることになる。
春彦はなぜ死んだのか。
あまりにも突然で、あまりにも用意周到ではないか。
そんな疑問を持ちながら読み進んでいく。
薫子が抱えているもの。
せつなが抱えているもの。
春彦が抱えていたもの。
そして薫子たちが家事代行に出向く家庭が抱えている問題も垣間見える。
読み終えて
薫子とせつなの出会いの場面も印象的だし、せつなが春彦の実家に訪れた時の両親との会話も強烈だった。
その場面が「あの本、読みました?」で紹介されたので読んでみようと思ったのだけど。
先日も言ったけど、ずっとウルウルしながら読んだ。
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薫子が抱えてきたものに。
人から「めんどくさい」と言われるほどの彼女の生真面目さや頑張りに。
無愛想なせつなの作る料理に窺える思いやりや優しさや温かさに。
彼女の料理がとっても美味しそうで、わたしは料理が嫌いだけど、こんな料理食べさせてもらったら満たされるだろうなーと。
「ここに、泣く要素ある?」と思われる場面なのに、なぜか涙が染み出してくる、ずっとそんな感じで読んでいた。
「心が弱ってるのか、自分」と思ったくらいだ。
3分の2を過ぎたあたりから、ちょっと景色が変わってきて、春彦が抱えていたものが浮かび上がてくる。
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いろんな要素が詰まった作品だった。
薫子と春彦に対する両親の接し方なんかも、毒親的なものを感じたし。
やっぱ、ジェンダー入れてきます?という気もした。
せつなと薫子が訪問する家庭の問題も重い。
「誰かの欲しいものに合わせて生きてきた」春彦も切ない。
ただ、最後があまりにも意外で唐突に感じてしまったよ。
まぁ、そういう生き方もあるのかもね。
とても深くて心に響くものがたくさんあった。
登場人物一人一人を全部掬い上げていてすごいと思った。
文句言いのタカハラ、一つだけ言わせてもらうと、ちょっと盛り込み過ぎでお腹いっぱいか…という部分はあるけど、いい作品だった。
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今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうかステキな1日を!