『あと少し、もう少し』『君が夏を走らせる』『その扉をたたく音』 瀬尾まいこ
この作品は『あと少し、もう少し』のスピンオフで、中学校時代に落ちこぼれて不良と言われていた大田君の話だ。
実は、今年の初めになんの予備知識もなく『その扉をたたく音』を読んだ。
そこで初めてそれが『あと少し、もう少し』のスピンオフだということを知った。
それなら前の2作をぜひ読まねばと思って文庫本だけは買っていたのだけど、予約してた図書館本も入ってくるしでなかなか進まず、この度やっと3作を読み終えたというわけだ。
それぞれ独立した物語ではあるけど、やっぱり『あと少し、もう少し』を最初に読んでた方がよかったなと思う。
以前のブログにも読書記録は書いてるけど、本来の順番でまとめてみた。
瀬尾まいこ作品 3部作
『あと少し、もう少し』
中学生が駅伝で頑張る話。
このテの小説にはめっぽう弱いタカハラだ。
もう「駅伝」と聞いただけで三浦しをんさんの『風が強く吹いている』を思い出してしまうし、それと同時に後半ずーっと号泣しながら読んだことを思い出す。
絶対泣くに決まっている。
中学校生活最後の駅伝に出場するために寄せ集められた6人。
みんな、中学生らしい不安だったり葛藤を抱えてたりする。
物語は、1区から6区を走るそれぞれの生徒の視点で語られていくのだけど、自分は中学生でもないのに、一人一人にやたら感情移入してしまうわー。
「うん、うん。あるよね、そういうこと。わかるよ。頑張ってるんだよね。」なんて思いながら入り込んでしまう。
特に大田くん。
「普通の中学生」からちょっと外れてしまうと、戻るきっかけがつかめないんだよね。
最初はただの好奇心で脇道にそれてみたとしてもレッテルを貼られてしまうから、貼られたレッテルの通りに行動するしかなくなるんだよね。
この経験をきっかけにして戻ってきてほしい。自分に素直な高校生になってほしいよ。
大田くんが走る2区ではウルウルした。
先に『その扉をたたく音』を読んだ身としては、中学校時代の渡部くんてこんな感じだったのかーなんて、ちょっと感慨深かった。
『君が夏を走らせる』
大田君のことは気になってたのよ。
あれからちゃんと高校に行ったのかなー、高校生活を楽しんでるのかなーって。
そうか、なかなかうまく行かないよね。と、そういうところがリアルだった。
物語は、妻子ある先輩からある頼み事をされるところから始まる。
先輩の、第2子を妊娠中の奥さんが入院するので、上の女の子の子守りをしてほしいというのだ。
おばちゃんからしたら、なんて無謀な…と思うんだけど。
大田君は1カ月間毎日先輩の家に通い、2歳の鈴香ちゃんと過ごすことになる。
無垢な子どもと接したり、公園でほかの子どもやお母さんがたと接したりするうちに、大田君の心もちょっとずつ変わり始める。
いや、何にも事故が起こらなくてよかった。
読んでる間、大田君が鈴香ちゃんを抱きながら料理をする場面などがあるんだけど、大丈夫か、火傷とかしないかしら…なんて心配で仕方なかったよ。
鈴香ちゃんの成長とともに大田君も成長して、何かを見つけたって感じでよかった。
あと、チラッと吹奏楽部のことや渡部君のことが描かれてて、次作へのフリかなと感じさせるところがあった。
『その扉をたたく音』
30歳を目前にしてミュージシャンへの夢を捨てきれず、仕事もせず親の仕送りで暮らしている宮路は、ある日余興のため介護施設を訪れ、そこで介護士の渡部が奏でるサックスの音に魅了される。
その後しばしば施設に通うようになり、入所者と触れ合ううち宮路の心に変化が起きる。
悪い人は出てこないあったかいお話だ。
生きていけばそのぶん、明日は一つ減り、また一つ減っていく。誰かと一緒にいられる明日。記憶に留めていられる明日。現実は予想以上に過酷だ。
P.180
若い頃はこういうことを考えたこともなかった気がするけど、高齢者になった今、刺さるよねぃ。
自分の残された日々がどういうふうに減っていくのか…って、普段ノーテンキなわたしもたまにしみじみ考えたりするのよ。
って、考えても答えが出ないことはすぐ考えるのをやめるけどね。
宮路くんも渡部くんも一段ステップを上がって、前を向いて光に向かって歩いていく、そんな感じの終わり方だった。
泣けたわ。
ちなみに、この時は宮路くんの視点で読んだような気がする。
渡部君の中学時代を知ってたら、渡部君の視点で読んだと思うのだけど。
そうすると、やっぱり感じ方は違ってたかもしれないなぁ。
かといってもう1回読む元気はないけどね。
瀬尾まいこさんの小説は優しくて、最後は希望が見えて、いいなーと思う。
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