
先日『犯罪者』がドラマ化されたので、過去に読んだ相馬・鑓水・修司が登場する三部作についてまとめてみた。
『犯罪者』
駅のロータリーにいきなり現れた通り魔が5人を狙って次々に刺すという衝撃的な場面が描かれる。
犯人は薬物中毒の青年と断定され、すぐに死体となって発見されるのだが、被害者の1人がかろうじて生き残り、そこから物語が始まる。
深大寺駅南口でそれぞれ誰かと待ち合わせをしていた5人。
本当に発見された青年が犯人だったのか、本当に通り魔の無差別殺人だったのか・・・。
そこからノンストップで読んだよ。
登場人物も多いけど、彼らの背景がとても丁寧に掘り下げられてるし、情景描写も細かく、テーマも産廃問題や食品の安全性と政治、それらが絡み合ってスケールが大きい。
場面がクルクル変わるから、ついていくのに一生懸命だった。
臨場感があって息をするのも忘れるくらいドキドキしたわ。
途中、みんなの心情や決意にウルウルするところもあったり、正直、やりきれないと思う場面もあったのだけど。
早く先が読みたいと思いつつも、読み終えるのがもったいないというか、名残惜しいというか、暫く忘れていた感覚に浸った。
『幻夏』
前作の事件が原因で相馬は刑事課から交通課に左遷されていた。
その相馬が小学6年生のひと夏を一緒に過ごした水沢尚と択の兄弟の物語。
2学期の始業式の翌日、尚はひとりで忘れ物を取りに帰ると言い、そのまま姿を消してしまった。
それから23年後、相馬の友人で今では興信所の所長をしている鑓水のもとへ尚の母親が現れ、尚を探してほしいと依頼する。
太田さんは物語への引き込み方がとても上手いと思う。
尚の父親は殺人罪で逮捕され強引な取り調べにより自供してしまう。
8年間服役したが、出所直後に冤罪だったことが公にされた。
そして今、一人の男が誘拐の容疑で逮捕され、こちらも冤罪の可能性が極めて高い。
警察が勝手に作り上げたストーリーに合うように証拠が捏造されて提示されたり隠蔽されたりして、自供に追い込んでいく。
警察の思いに反することは全部「嘘だ」と言われ、警察の思惑どおりに「やった」と言うまで拘束され続ける。
こうして冤罪がつくられていくんだなと…。
事件は現在と過去が複雑に絡み合っていて、読み手にとってはこれでもかっていうくらい辛く切ないことが重なり、どんどん奈落に落ちていくような気分だ。
でも、最後は尚が生きようという思いに至る。
太田さんの作品は最後にほんの一筋の光が見えるから、救いがある気がする。
『天上の葦』
この作品を読んだのはコロナ禍の頃だったと思う。
まさに当時わたしがテレビのワイドショーやニュースに対して抱いている違和感を具象化したようなことで、とても興味深かった。
2017年に書かれたものらしいけど、メディアのあり方に警鐘を鳴らすもので、著者自身も「今書かないと手遅れになるかもしれないと思った」と言っている。
戦争の場面が長くてちょっと苦しかったけど、正光と喜重のつながりを描くためにはなくてはならない描写だったと思うし、そういう背景が丁寧に描かれているからこそ作品の重みも増してくるのだと思う。
「察して動け」、権力者がそういう考えを持つと、本当に怖い世の中になるよね。
当時、某放送局のキャスターが政府の意に沿わない質問をしたからと、その番組を降ろされたりするようなことや、ある番組で番組の意図する方向とは違う考えを述べた某大学病院の医師がよそへ飛ばされたということがあって、不気味だなと思ったことを覚えている。
太田さんの作品は、現代社会のあり方を突きつけられているようで興味深い。
ちなみにドラマ『犯罪者』は扱うことが多過ぎてちょっとわかりにくかったように思う。
画面も暗過ぎではなかったのかと。
他の2作もドラマになるのだろうか。
そうなったら絶対観るけどね。

