【読書】『ありか』|毒親との訣別

【読書】『ありか』|毒親との訣別

3.0

物語の展開

母親との関係に悩みながらも、一人娘のひかりを慈しみ育てる、シングルマザーの美空。
義弟で同性のことが好きな颯斗は、兄と美空が離婚した後も、何かと二人の世話を焼こうとするがーー。

毒親の呪縛に囚われている美空。
母が来ると思うと、どこかこわばる感じがする。
母は私のために何もかもを犠牲にして育ててくれたのだ。
感謝しなくてはいけない。機嫌を損ねてはいけない。

そんな美空だが、彼女自身も女手ひとつで娘のあかりを育てている。

母は「どれだけのことをしてもらったか、親になってから知るんだよ」と言っていたが、この日々のどこに恩を感じさせるべきところがあるのだろう。
これ以上に私を満たしてくれるものも、これ以上に私を動かしてくれるものもない。

誰にも頼らず1人であかりを育てていこうとしていた美空だが、周りの人の善意に助けられながら、しっかりと自分を確立していく。

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読み終えて

美空の母親には「今でもそんなこと言う人がいるのか」と呆れたけど、悪い人なわけではない。

生活していかなければならない、美空を育てなければならないと必死で、まったく余裕がなかったのだと思う。

とはいえ、一生懸命働いて1人で子育てしている娘に生活費を要求するのはどうかと思うし、美空の母親に対する反応を見ても、毒親であることは否定できない。

それに引き換え義弟や同僚、一見怖かったママ友も、みんな見返りを期待しない善い人ばかりだ。
彼らに助けられ、人の好意を受け入れ甘えられるようになっていく美空。

しっかりと自分を確立して母親の呪縛からも飛び立つことができた。
あかりちゃんが素直で可愛くて、美空がどれだけ愛情深く育てているのかがわかる。
彼らの未来は明るそうだ。

と、微笑ましく読み終えられたのだけど、正直なところ今のわたしにはどこか「綺麗ごと」という印象で、それほど響くものはなかったかなー。

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