この地方では運が悪いことを「まんが悪い」と言う。
わたしぐらいの年代だとあまり使わないけど、母の世代、特にウチの母はよく使うように思う。
人には持って生まれた「運」があるというのが母の考えだそうだ。
うーん(「運」だけに)、確かにそういう部分もあるかもしれないけど、わたしは人の人生を運がいいとか悪いとかで片付けるのには抵抗があるなー。

- Contents -
『逃亡者は北へ向かう』 柚月裕子
物語の展開
児童養護施設で育った真柴亮は、工場で真面目に働いていて、もうすぐ正社員にしてもらえる予定だった。
ある日先輩の甲野に誘われ、嫌々ながらスナックに行くことになる。
そこで甲野と他の客とのトラブルに巻き込まれた亮は、1人に怪我をさせてしまう。
そこから彼の人生は歯車が壊れ、負のスパイラルに巻き込まれていく。
その時起きた震災により釈放された亮だが、とある人物と揉み合いになりはずみで刺し殺してしまう。
しかし、彼には行かなければいけない所があった。
どうしても会わなければいけない人がいた。
そこから彼の逃亡劇が始まるのだが。
容疑者を追う刑事の陣内は
「世の中には、生まれながらにして運に見放されている者がいる」と言う。
読み終えて
真柴亮は決して悪人ではない。
ただ、いろんなことがうまく噛み合わず、結果が悪い方へ悪い方へと行ってしまう。
こういう人はやはり「運が悪い」と言うしかないのだろうか。
生まれながらにして運に見放されているのか。
「どうしてこんなことになってしまったのか」
考えた亮が辿りついたのは
「誰のせいでもない。その時々で道を選んだのは自分だ。」
その言葉に少し救われた気がする。
自分に起きたことが何もかも誰かのせいだったり、運のせいだったりにはしてほしくないと思う。
残された人たちが前を向いて歩き出そうという希望は感じられた。
でも、悲しい結末だった。
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