『墨のゆらめき』 三浦 しをん
物語の展開
ホテルマンの続力と書家でホテルの筆耕士遠田薫の物語。
力は仕事を依頼するため遠田の家を訪れる。
遠田は奔放でつかみどころがなく、力は彼に急に呼び出されたり、代筆の文面を考えさせられたりして振り回されることになる。
しかし、遠田の人柄や彼の書に引き込まれ魅せられていく。
遠田の書く年賀状にはその年の干支の龍の姿が浮かび上がり、また漢詩「送王永」からは静かな悲しみが押し寄せてくる。
2人はだんだん親しくなっていき、他愛のない会話をするようになるのだが、時々会話の一端に遠田の中にある「何か触れてはいけないもの」を感じる。
そして力がホテルの業務に忙殺されていた頃、遠田から筆耕士の登録を解除してほしいとメールが届く。
驚いて遠田の家に飛んで行った力は、彼の生い立ちを聞くことになり…。
読み終えて
正直言って物足りなかったです。
「風が強く吹いている」「まほろ駅前多田便利軒」「舟を編む」などはとても好きな作品だし、彼女のエッセイも面白くて大好きですが…。
「書」というものにあまり馴染みがないせいか、でもそこまで書にこだわった内容でもない気もするんだけど、わたしにはグイグイくるものが感じられませんでした。
もちろん文章は上手いし2人の会話もおもしろくて、入り込んで読めるんだけど、イマイチ手応えがないというか…。
「何にも起こらないのかな〜」なんて思いながら読んでましたが、最後遠田の来し方が語られて「ふーん、こういうことか…」って感じ。
なに不自由なく呑気に真っ当に暮らしてきたおまえには、どんなに密接交際したって俺のことなんざわからねえよ
p.209
これは力に向かって放った遠田の言葉だけど、たしかにわたしはそういうことはあると思うのです。
残念なことだけど。
ただ、だからと言って付き合いをやめるとか友達関係を解消するとか、そういうことにはつながらないとは思う。
この作品、出版社の販促コピーは「正反対の二人があなたの想いを代筆します」ということだけど、個人的にはちょっと的外れな気がします。
そこじゃないよね、っていう。
じゃあ、どこなのかと言われると、それがよくわからない。
だから物足りなかったのかなと…。
最後はスカッとしたように見えるけど、わたしの中にはなんとなく中途半端にモヤっとしたものが残ってる状態です。
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今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうかステキな1日を!