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『うらはぐさ風土記』 中島 京子
物語の展開
夫と離婚して30年ぶりに日本に帰ってきた田ノ岡沙希は、武蔵野にある母校の女子大で講師をすることになり、今は施設に入っている伯父の家で暮らすことになった。
彼女はその「うらはぐさ」と呼ばれる地域で、いろいろな個性的な人々と出会う。
- 定職についたことのない高齢者、秋葉原
彼は庭仕事に詳しく、自宅の屋上で野菜を栽培しており、伯父の家の庭も定期的に世話をしにきてくれる。 - 秋葉原さんと高齢結婚をした真弓
刺し子が得意で、自分で作った小物を自宅の足袋屋で売っている。
沙希は彼女のことを「刺し子姫」と呼んでいる。 - トンデモな敬語を使う学生マーシー
- マーシーの友達で陸上部のエース、パティ
- 沙希の同僚来栖先生とその恋人の猿渡
等々。
彼らとの関わりや人と人との縁、四季のうつろいなどがゆったりと描かれていく。
読み終えて
物語は淡々と、静かに進んでいきます。
中島さんだから、このままではないよねと思い始めた頃、トンデモな敬語を使う学生マーシーが登場して一気に目が覚めました。
彼女の言葉遣いがなんとなくこの作品のスパイスになってるような…。
マーシーが弁論大会で演説したうらはぐさ地域の歴史も興味深かったです。
平穏で波風の立たない物語かと思ってたら、都市開発によって昔ながらのあけび野商店街がなくなるかもしれないという危機が訪れます。
沙希にとっては驚きだったけれど、街の人々は知っていて、それほど狼狽えてもいないし動じてもいない。
皆それなりに考えを持ってどっしりとしている印象です。
そして、いろんな人と人との繋がりにより、街は前へ進み始めます。
あけび野商店街の未来を考える会が起ち上がり活性化に向かって動き出します。
沙希の伯父が言う「いいもんにあれしなさい」が納得できるような…。
彼女の暮らしぶりや心情も少しずつゆったりとしてきた様子がうかがえます。
梅の次には桃が、桃の次には木瓜が花をつけた。冬から咲いていた山茶花はその季節を終えたが、椿がおおぶりの見事な花を咲かせるようになった。伯父の庭の牡丹も、赤みがかった葉を伸ばしつつある。
P.177
このような季節の移り変わりを感じて楽しみに過ごしている沙希に、とても共感を覚えて心が和みました。
沙希の夢に出てきて気になってたマロイくんの件もスッキリしたし。
すべて「いいもんにあれした」感じで気持ちよく読み終えました。
ウラハグサの花言葉は「未来」だそうです。
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今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうかステキな1日を!