『川のほとりに立つ者は』 寺地はるな
今年の本屋大賞にもノミネートされている作品。
寺地はるなさんは、最近1番気になっている作家さんだ。
物語の展開
カフェの若き店長、原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。
Amazonより
松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。
松木は幼なじみの岩井樹と喧嘩をしていたようで、目撃していたまおという女性は「松木さんが一方的に樹さんを殴っていたんじゃないか」と言う。
仲良しのはずだった2人に何があったのか。
今まで読んできた寺地さんの作品とはちょっと違う、ミステリーっぽい流れになるのかしらと思いながら読み始めた。
物語は清瀬の側からと松木の側からと、交互に展開されていく。
引用したAmazonの内容紹介のような単純な話ではない。
2人の関係性だけにとどまらず、清瀬とカフェのスタッフ品川、樹と母親、松木とその母、樹とまお、松木と樹、様々な関わりが描かれている。
ネタバレになってしまうので、それぞれ詳しいことは書けないけど、生きていくということはいろいろな人と関わらなければならず、人は表面には見えないものを抱えているということだ。
自分の「普通」を相手に当てはめるのは危険だ。
清瀬はそういうことを学んで成長していく、同時に読者にも訴えかけている…というような物語。
読み終えて
もうタカハラぐらいの歳になると、人を自分の物差しで測るというようなことはないけど、おばちゃん目線で清瀬に目を向けると、彼女がこの経験を通して成長したのがよかったねと思える。
物語の内容は深い。
ミステリーではない。
清瀬が「扱いづらい」と思っているカフェの品川は、外からは見えない特性を抱えている。
実は我が家の長男も同じような特性を持っているので、身につまされる思いがした。
樹の母は、店の仕事に忙殺されていたため、樹の特性に気づく余裕がなかったのだろうか、それとも受け入れられなかったのだろうか。
松木の母は、松木のある日のある一面だけを見て「乱暴な子」と決めつけ、彼と関わることを放棄してしまった。
そんなちょっとしたズレが重なって、清瀬にも樹の母にも松木の母にも、なんとなくモヤモヤした思いを抱えて読み進んだけど、考えさせられることも多かった。
樹が恋心を抱いたまおは、「こんな人いるんだろうな」とは思うけど、理解はできない。
ただ、おみくじを大切に持っていたのは、彼女にも樹の心は伝わっていたのだろうと、彼女の心も柔らかくなったのだろうと思いたい。
どうしてもおばちゃん目線で見てしまうけど、一生懸命生きている全ての登場人物にエールを送りたい。
寺地さん、やっぱりいいわ〜。
大矢博子さんの書評に共感するところが多かったので、よかったらご参照ください。
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