
『さよならジャバウォック』 伊坂 幸太郎
伊坂さん、ずいぶんお久しぶりな気がする。
『マイクロスパイ・アンサンブル』以来のようだ。

物語の展開
物語は主婦の量子のパートと、ミュージシャンのマネージャーの斗真のパートが並行して進んでいく。
量子には幼稚園の息子がいるが、夫のDVに耐えられず殺害してしまう。
茫然自失となっているところへ大学時代の友人である桂凍朗が現れ、テキパキと遺体を搬出し「なかったこと」にしようとする。
2人で遺体を運び出し凍朗所有の山に埋めようとするのだが、突然凍朗が姿を消す。
量子は眠ってしまったようで、目が覚めた時には破魔矢と絵馬という若い夫婦がそばにいた。
一方斗真は、昔大人気だったミュージシャン伊藤北斎のマネージャーをしている。
北斎はコンサートでのある発言が炎上して叩かれ、業界を引退して歌うことすらしなくなっていた。
斗真も当時彼を誹謗中傷したひとりだったが、今は音楽の道に戻ってほしいと思っている。
一見何の関係もないような2つのパートだが、破魔矢と絵馬という共通の人物と繋がっている。
物語はどこへ向かっているのか…。
読み終えて
「ヒトほど温厚な種はいないし、これほど残忍な種もいない」
「敵がいて、正義は自分たちにある。そう思った時のヒトは、敵側に対して、驚くほど残忍になる」 (p.167)
この物語のキーマンとも言える桂凍朗は、人間の残忍なところをホルモンのようなもの、ジャバウォックのせいにしてそれを取り除きたかったのだろう。
現在世界で起きている戦争や内紛、それを起こしている人間の脳をどうにかしたかったということなのだろう。
「他人と過去は変えられないけど、自分と未来は変えられる」説得力のある言葉でしょっちゅう耳にする言葉が、この小説の中で何度も繰り返される。
文章はどんどん読めるし、伊坂さんならではの表現もあってホッとする部分もある。
「何がどうなってるんだろ」という興味で読み進む。
ただ、読んでる間は「しんどい」って感覚だった。
荒唐無稽な話ではあるし、どこへ行くのか、何が真実なのか、掴みどころがないというか。
最後まで読むと、なんとなく言いたいことはわかる。
そして「そういうことだったのか」と納得もする。
その上でもう一度読むと、場面場面で「なるほど」と辻褄も合う。
そしてジワジワと含蓄のある話だったと気づく。

初対面の『重力ピエロ』で心を打ち抜かれ、それから追っかけてきた。
特に『死神の精度』『チルドレン』『ゴールデンスランバー』、それから『オーファーザー』も『ガソリン生活』も、殺し屋シリーズ(『777』は未読だけど)も好きだった。
でも、最近は「ちょっとついて行けないかも」と思うことが多くなったような気がするなー。
頭の老化のせいだろうか、もうちょっと単純に進むほうがわかりやすいと思うように。
2回読まないとわからない…。
実は、殺し屋シリーズの『777』はさっきまで知らなかった。
不覚だったわー。
もちろん読みます!

