
『成瀬は都を駆け抜ける』 宮島 未奈
成瀬シリーズ完結編。
1と2は図書館で借りて読んで、この完結編も予約していたのだけど、なんと589人待ち。
1年後ぐらいか…と思いつつも待つつもりだった。
ところが、先日『あの本、読みました?』で成瀬特集があり、皆さんの話を聞いていると我慢できなくなってその場でポチったのだった。
内容紹介
膳所高校を卒業し、晴れて京大生となった成瀬あかり。一世一代の恋に破れた同級生、「達磨研究会」なる謎のサークル、簿記YouTuber、娘とともに地元テレビの取材を受ける母、憧れの人に一途に恋焦がれる男子大学生……。千年の都を舞台に、ますます個性豊かな面々が成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎のもとには成瀬から突然速達が届いて……⁉ 全6篇、最高の主人公に訪れる大団円を見届けよ!
- やすらぎハムエッグ
「わたしは、早田くんがいたから生きてこられたの」と言う坪井さくら。
坪井は早田くんと同じ京大に行くために頑張って合格したのだが、早田くんは東大に行ったのだった。
失意のまま入学式を迎えた彼女は成瀬と出会う。 - 実家が北白川
ふとしたはずみで大学の達磨研究会に入ることになった梅谷誠。
彼は自宅通学で実家は北白川にある。
先輩のため「黒髪の乙女」を探していた梅谷は坪井と一緒にいた成瀬を見つけ、2人を研究会に連れていく。 - ぼきののか
日商簿記一級合格を目指しているYouTuberぼきののか。
合格祈願のため北野天満宮に来たところ、びわ湖大津観光大使のたすきをかけた成瀬に遭遇。
その後一緒に簿記の勉強をすることになる。 - そういう子なので
あかりの母美貴子は、あかりが滋賀のローカル番組に出演するというのでインタビューを受けることになった。
夫の慶彦とともに、アルバムを見ながらあかりが小さかった頃のことを思い出す。 - 親愛なるあなたへ
高校時代かるた大会で成瀬と出会い、ミシガンに乗った西浦。
あれ以来手紙のやり取りをしているが、自分の思いは届いているのだろうか。
「やっぱり俺、成瀬さんのことが…」 - 琵琶湖の水は絶えずして
東京に行っていた島崎の元に成瀬から速達が届く。
「大津市民病院に入院している。話したいことがあるから、来てくれないか。」
大急ぎで病院に行った島崎は、成瀬からあることを頼まれる。
読み終えて
今作は個人的に刺さるところがいっぱいあって、実感として染み込んできたという印象だ。
「実家が北白川」では森見登美彦さんの作品がたくさん出てきて楽しかった。
『夜は短し歩けよ乙女』は初めて読んだ森見作品で、その後しばらく追いかけていた。
『太陽の塔』と『四畳半神話大系』は未読なのが残念だ。
あかりちゃんのお母さんの話も興味深かった。
前作で、学校生活ではいろいろやりにくいこともあっただろうなと想像していたので「やはり…」という感じ。
我が家の長男も学校の枠にはまらない子だったのでね、なんとなくお母さんの気持ちがわかる。
三者面談のことも、わたしだったらあの担任に相当言い返してると思うなー。
ひとつひとつに反論したいところだが、相手が考えを改めるとは思えない(p.127)
たしかに。
わたしはジタバタ反論してきたけど、美貴子さんの「そういう子なので」という言葉は深い。
あかりちゃんの全てを受け入れているということだ。
というか、40代前半の著者がこのお母さん像を描けるのがすごいなと。
そして、成瀬のびわ湖大津観光大使としての最後の仕事は疎水船に乗ることだ。
5年前、琵琶湖疏水を辿りたくて娘と滋賀に行った。
わたしたちは第一トンネルから京都に向かうつもりで疏水船を予約していたのだけど、直前にあの流行病のおかげで中止になり、蹴上まで歩いたのだった。
途中、ちょっと電車に乗りつつ、日本最初の鉄筋コンクリートの橋も見たよ。
GWの頃で桜も菜の花も終わってたけど、とても心に残る旅だったので懐かしく思い出した。

そういうこともあって、今作は特に身近に感じられた。
読んでる間も「これで成瀬とお別れか」と思うと、一気読みするのがもったいなくて、1章ずつ読んだのだ。
名残惜しい。
もっとずっと成瀬と成瀬が出会う人々を見ていたいという気持ちで読み終えた。



