
『暁星』 湊 かなえ
内容紹介
現役の文部科学大臣で文壇の大御所作家でもある清水義之が全国高校生総合文化祭の式典の最中、舞台袖から飛び出してきた男に刺されて死亡する事件がおきた。逮捕された男の名前は永瀬暁、37歳。永瀬は逮捕されたのち、週刊誌に手記を発表しはじめる。
そこには、清水が深く関わっているとされる新興宗教に対する恨みが綴られていた。
また、式典に出席していた作家は、永瀬の事件を小説として描く。ノンフィクションとフィクション、ふたつの物語が合わさったとき見える景色とは⁉
作品は2部に分かれていて、前半は逮捕された永瀬暁の手記である。
永瀬暁には生まれつき心臓病を抱えた弟がいて、母親はその弟をなんとかして救いたいと宗教にのめり込んでいく。
父親は作家だったが、暁が6歳の時に自死する。
彼が襲った清水義之が父親の自死の一因になったのではないかという思いを抱えている。
一方式典に出席していた作家、金谷灯里は小さい頃からそれとは知らずに母親に集会に連れて行かれ、教団の利益になることを手伝わされていた。
後半はこの作家が発表した『金星』という小説の体で書かれているが、「終章」で本人が吐露しているようにノンフィクションであることは明らかだ。
宗教二世という立場で出会った二人はもがきながら愛を育み、新しい未来をつかもうとしていく。
読み終えて
前半と後半で描写が変わり、構成を知らずに読んだわたしは戸惑ってしまった。
どうしても4年前のあの事件を思い起こさずにはいられない。
宗教にのめり込んで多額の献金をした母親。
その宗教団体と深い関わりがあったと言われている人物を恨む。
作品には宗教二世の2人がどれほど辛い思いをして理不尽な目にあったかが描かれていて、軽々に「逆恨み」と言ってはいけないと思わされる場面もあった。
同情するところもあった。
でも彼らの母親は信じることで救われていたのではないのだろうか。
宗教を拠り所としていたわけで。
彼女たちはそれなりに何かしらの心の恩恵を受けていたのでは…?
わたし自身は、宗教にのめり込んでそこにお金を注ぎ込むというのが理解できない。
宗教とはそういうものではないと思っているので彼女たちの気持ちはさっぱり分からない。

実際の事件の時もそうだったけど、ただ宗教のせいだ、犯罪を犯した彼らが可哀想だというのはなんだかモヤモヤする。
親を選べないというのはわかるけど、やっぱり親との問題で、恨みを向ける矛先がズレてるんじゃないかと思う。
「終章」で暁は生きる希望となる星を守りたかっただけと言っているけど、どうであれ殺人は許されない。
重苦しい展開だったけど、彼らはおそらく夜明け前の一番暗い時を乗り越えたわけだから、希望を持って未来に向かって歩き出すのだろう。
そうであってほしい。

