
『かたばみ』木内 昇
木内昇さん、名前を「のぼり」と読むことは知っていたけど、女性とは知らなかった。
字面から男性とばかり思ってたわ。
明らかなジェンダーバイアスだね。
失礼しました。
内容紹介
西東京の小金井で教師生活を始めた悌子は、幼馴染みで早稲田大学野球部のエース神代清一と結婚するつもりでいたが、恋に破れ、下宿先の家族に見守られながら生徒と向き合っていく。やがて、女性の生き方もままならない戦後の混乱と高度成長期の中、よんどころない事情で家族を持った悌子の行く末は……。
幼馴染の清一と結婚するものだと思っていた悌子だが、清一は悌子の同級生の華奢で儚げな女性と結婚し、子どもをもうけ出征してしまった。
終戦を迎え清一が戦死したとわかった後、清一の父親と妻が子どもを連れて悌子のもとを訪れる。
その子どもを悌子の養子にしてほしいと言うのだ。
身勝手な彼らの言い分に、腹立ち紛れに引き受ける悌子。
その一方で戦中・戦後の学校教育に違和感を抱きながらも教師としての責任を果たそうとする。
読み終えて
初めて読んだ木内作品は『笑い三年、泣き三月。』だった。
その中のあるフレーズに痺れて、この人のファンになったのだ。

そういうわりに、あまりたくさんは読んでないんだけど。
この作品は4作目ぐらいだろうか。
登場人物のセリフには、おそらく著者の考え方が表れているだろうと思うんだけど、やはりこの人の考え方が好きだ。
「詳しくはわからんが、自分のせいだと言い切るのも傲慢だけどな。人ひとりが引き受けられることなんて、ちょっぴりなのにさ」 p.167
「自分の子がさ、世の中から浮くのが嫌なんだろうね。そのことで自分たち親が後ろ指さされるのも嫌なんだろう。あれはあれで、利己的ってやつかもしれねぇな」 p.405
「実子だろうが養子だろうが同じ。あのね、自分の子育てが正しい、完璧だ、って胸張ってられるのは、頭が空っぽな、おめでたい人だけだよ」 p.490
こういう言葉には激しく納得させられるし勇気づけられる。
あとは戦争から帰ってきた、権蔵の義弟にあたる茂樹の生き方も前向きで好きだなー。
清太の生みの親は、ちょっと腹立たしかったけど、最後まで腹立たしかったけど。
そういう生き方しかできなかった時代なのかもしれないとも思ったり。
あの時代の教師や生徒たちが直面した教育方針の転換も、なかなか受け入れ難いことだったのではないか。
わたしの両親もそういう時代を生きたんだなーと。
みんながそれぞれの良心に従って必死で生きている様が描かれている。
じんわり心温まる作品だった。


