『喫茶おじさん』原田 ひ香
松尾純一郎、バツイチ、57歳。
大手ゼネコンを早期退職し、現在無職。妻子はあるが、大学二年生の娘・亜里砂が暮らすアパートへ妻の亜希子が移り住んで約半年、現在は別居中だ。
再就職のあてはないし、これといった趣味もない。
ふらりと入った喫茶店で、コーヒーとタマゴサンドを味わい、せっかくだからもう一軒と歩きながら思いついた。
趣味は「喫茶店、それも純喫茶巡り」にしよう。
東銀座、新橋、学芸大学、アメ横、渋谷、池袋、京都──「おいしいなあ」「この味、この味」コーヒーとその店の看板の味を楽しみながら各地を巡る純一郎だが、苦い過去を抱えていた。
妻の反対を押し切り、退職金を使って始めた喫茶店を半年で潰していたのだ。
仕事、老後、家族関係……。たくさんの問題を抱えながら、今日も純一郎は純喫茶を訪ねる。（内容紹介）
物語の展開
主人公、純一郎は不倫の末離婚し、不倫相手と再婚したが、その妻も出ていき現在はひとり暮らしだ。
早期退職して退職金の半分を資金に喫茶店を開業するが、半年で潰してしまう。
その後、再就職先を探しながら純喫茶をハシゴして過ごしている。
時々、娘や妻、昔の同僚や後輩などと会うが、彼らに決まって「あなたは何もわかっていない」と言われるのだ。
何が「わかっていない」のだろう。
深く考えることもなく日々を送る純一郎だが、ある日喫茶店開業教室の同期であるさくらに「店を手伝ってほしい」と言われ、アルバイトをすることになる。
そして自分の店を堅実に営んでいるさくらから
「あなたが喫茶店経営に失敗したのは、失敗できる立場にいたから」と痛烈なひと言を浴びる。
読み終えて
不倫の末離婚し、再婚相手にも出ていかれる主人公。
退職金の半分で喫茶店を開業し、半年で潰してしまう主人公。
それなのに悲壮感も緊迫感もなく（ないように見える）、毎日フラフラ喫茶店をハシゴして、これでもかというくらい軽食だのデザートだのを食べている。
なんだ、コイツ。
最初に喫茶店を開いた時にはリサーチもせず、これというコンセプトもなく、ただ漠然と「喫茶店でもしよーかな」という思いだったんだろう。
それが半年で潰れてしまっても、どれだけ努力をしたのかは知らないけど、特に反省も後悔もなく「しゃーないわ」で片付けてる印象だ。
それに比べて同期のさくらの必死さが伝わってくる。
結局、1年間いろんな喫茶店を巡って自分なりに方向を見つけることになるので、まぁ良かったと言えるかな。
主人公は憎めない人ではあるけど、奥さんからしたらイライラするよね、たぶん。
奥さんの人となりもあまりよくわからなかったけど。
全体的にぼんやりしていて、さくらさん以外ピリッとしたところが感じられなかったなー。
ただ、喫茶店の描写は詳しくて、実在するお店なんだろうか、どこにあるんだろう、そういえばこういうお店テレビで見たような気もする…なんて思いながら楽しく読めた。
純一郎さんに幸あれ…、だ。
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今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうかステキな1日を！
