『ミカエルの鼓動』 柚月裕子
柚月裕子さんは好きな作家さんで、たしかデビューは「臨床心理」だったと思うけど、それ以来医療ものは記憶にないような…。
なんて、わたしの記憶などまったくアテにならないけど。
自分としては久々の医療ものという認識で、読むのを楽しみにしていた。
物語の展開
舞台は北海道中央大学病院。
北海道で初めて手術支援ロボットミカエルを導入し、最先端医療の場として注目されている。
そこの看板医師と言われているのが、ロボット支援下手術の第一人者西條医師だ。
正直50ページ過ぎぐらいまでは人物紹介のような形でイマイチ気分が盛り上がらなかったのだけど、真木先生が登場して西條医師の心の揺れがうかがえるあたりから読むスピードがアップした。
西條が目指すのは平等な医療だ。
現在保険適用外のミカエルによる手術の利点と安全性を立証し、保険適用を認めてもらおうとロボット支援下手術の腕を磨いてきた。
そこへ現れたのが従来の術式で完璧な手術をする真木だ。
真木が来て以来、それまでミカエル手術の推進に前向きだった院長の態度が変化し、西條の気持ちが揺らぐ。
プライドとか嫉妬とか、そんな気持ちから彼自身が本来抱いていた理念が少しずつずれていくのが読み取れる。
そんな時、西條を慕っていた医師が退職し自殺する。
原因はミカエルの操作ミスで患者を死なせたからだと言われているが、あるジャーナリストはミカエルには欠陥があると言って、病院と医療機器メーカーの癒着を追求している。
一方、彼らの病院に運ばれてきた心臓病を抱える少年の治療について、西條はミカエルで弁置換を主張するが、真木は開胸手術で弁形成を主張し、意見が対立する。
真木は西條が助手についてくれれば開胸手術は成功するというのだが、それは西條のプライドが許さない。
西條としては、この手術は是非ともミカエルでやって成功し、実績を上げたいところだ。
最終的には手術は成功するが、西條は自分自身の医師としてのあり方を深く考えるようになる。
読み終えて
ミステリーという要素はほとんどなかった。
Amazon によると「気鋭の著者が、医療の在り方、命の意味を問う感動巨編」ということだが、感動というところまではいかなかったかなー。なにしろ、感動のアンテナが錆び付いているもので…。
テーマとなっているのは手術支援ロボットをめぐる病院と医療機器メーカーの癒着、またそれに関わる医師たちの葛藤というところだろうか。
個人的には最後の方は真木の生い立ちが延々と説明されていて、微妙に違和感を持ってしまったのだけど。
真木の、父親に対する言葉の中に
可愛がりもせず、育てもせず、責任も持たない。
という言葉があり、つい先日我が家に起こった出来事に重ねてしまい「あら、おんなじだ」と思ってしまった。
我が家の場合は、自分が一緒に遊べるころまでは一緒に遊んでたんだけどね。
ただ、真木の父親は自分が重い病に冒されていると知って、まだ経験の浅い息子に執刀してほしいと懇願した。
父親は、自分は父親らしいことを何もしてこなかったから、最期くらい息子の役に立ちたい、息子に手術の経験をさせたいという思いだったということだ。
「やっぱり、うちの子どもたちの父親とは全然違ったわ…。」
と、そんな気持ちで読み終えた。←そこ?
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