最近「ハズレなし」と思っている作家、寺地はるなさん。
紹介文には「サスペンス」と書いてあるけど、そういう印象ではなかったです。
『わたしたちに翼はいらない』 寺地 はるな
物語の展開
序章
下校中の4人の小学生。
何度も転校を繰り返しているかんなは「なじむ」ことがなにより大事だと思っている。
特に最初に声をかけてくれた陽向には気を遣っている。
第1章から場面は変わり、同じ地方都市に生まれ育って、現在もそこで暮らしている三人の話が進んでいく。
中学時代、朱音と園田は学校ヒエラルキーの、言わば下位にいた人々で、いじめを受けていた。
朱音がいじめられていることを知った教師は「雲に届くように高く飛べ」と言ったが、それは朱音の気持ちを受け止めてくれたものではなかった。
園田は自殺しようとするが、その前にいじめのリーダーだった大樹を殺そうと思い直す。
莉子はボス的存在の大樹と付き合うことがステータスだと思っており、大樹に選ばれた自分は上位にいると思っている。
そして大人になった彼ら
朱音:群れから外れても堂々としていること。友達がいないと恥ずかしいなんていう考えは捨てること。
莉子:知っていることでも知らないふりをするのは処世術であると教わってきた。本当にそれでよかったのだろうか。わたしは、わたしが望んだとおりに幸せだろうか。
園田:大樹を殺すチャンスを窺っているが、結局自分の人生にうんざりしている。死ぬ勇気もなく「死なない理由」を探している。
3人の苦悩や葛藤、そして自分を見つめて変化していく様子がとても深く丁寧に描かれていく。
彼らはどこへ向かうのか、どう生きていくのか…。
物語の終章が序章につながり、微笑ましい光景が描かれる。
読み終えて
歳のせいではないかもしれないけど、入り込むというよりは、なんとなく第三者的立場で読んでしまいました。
わたしたちが中学生の頃って、それほど「いじめ」ってなかったような気がするのだけど。
地元の中学校がとても平和だったのか、わたしが気づいてないだけだったのか。
ヒエラルキーとかもどうなんだろう…。
ある友人が「わたしなんかヒエラルキーの下の方だったから」と言ってたけど、そういうのは意識したことはなかったです。
でも、成績のいい人と悪い人、運動ができる人とドンくさい人というような区別は、だれの中にも漠然と潜んでたような気はします。
それが差別とかいじめとかにつながるようなことはなかったけど…。
園田が大樹を殺したいほど憎んでいるのも、わからなくはないです。
中学時代に大将だった子って、同級生に対していつまでも大将みたいな気分でいるみたいですもんね。
そういえば、いたなー、そういう子。
同窓会でも、いまだに大将っぽく振る舞ってる男子。
莉子は「女の子は男性に守られるのが幸せ」という考えの母親に育てられ、自分の意思を持とうとしなかったという感じですが、いろんな気づきがあって自分の道を進んで行こうとします。
朱音はブレない。
先生に「高く飛べ」と言われたけれど、朱音は飛ばない。
どれほど醜くても、愚かだと笑われても、地べたを歩いて生きていこうと決めた。わたしに、翼はいらない。 (p.199)
朱音には強さを感じました。
おばちゃんとしては、もう少し肩の力を抜いてもいいかもとも思いますが…。
最後は3人ともそれぞれ進む道を見つけたようでよかったです。
終章から序章へつながる子どもたちの姿が微笑ましかったです。
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今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうかステキな1日を!