恩田さんファンのタカハラ、タイトルに惹かれて久しぶりに単行本自腹で買いました。
『鈍色幻視行』恩田陸
物語の展開
謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。 撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――
船の上という閉鎖された空間が舞台です。
前半は参加者全員で語り合い、後半は梢が1人1人にインタビューする設定ですが、ほぼ参加者の独白のような形で描かれます。
呪われた小説『夜果つるところ』の著者、飯合梓はどんな人物なのか、男性か女性か、そもそも本当に存在したのか。
この小説の映画化にあたって脚本を書いたのは、梢の夫雅春の元妻笹倉いずみだが、彼女は本を書き上げた後自殺してしまう。
彼女の死の原因は?
鈍色の海の上、空と海との境目も曖昧で、物語はいかにも恩田さんらしい空気感に包まれて進んでいきます。
読み終えて
初めのうち、なんとなく自分の中で焦点が定まらなくて、読むのに随分時間がかかってしまいました。
結末はどうなのか、飯合梓の謎は解けたのか…というところはさておき、小説家である梢の考えるところは恩田さん自身の思いなのかなーと思うと、とても興味深かったです。
それでなくとも、今はお話をうまく終わらせるのが難しい時代である。
p.602
あまりにハッピーに終わらせればリアリティがないと言われ、思わせぶりに終わらせれば、ああ、続編の予定があるのね、と言われる。
投げ出すように終わらせれば、何か裏でトラブルがあったのかしら、と疑われ、広告とのタイアップの有り無し、版元の懐具合や作者の健康状態など、誰もが勝手に深読みをする。
等々…。
恩田さんの作品は着地点が曖昧だったり、しっかり着地しないで終わることがあるよなーと思うこともあり、一時期「なんだかな〜」と思っていたこともあります。
たぶん、きちんと着地してるんだけど、わたしにはその着地点がよく見えないということだと思いますが…。
ある時、
それはそれでいいのだ、それが恩田さんなのだ。
結末がどうであろうとわたしは恩田さんの文章が好きなんだ、恩田ワールドに浸りたいのだという境地に至りました。
恩田さんの作品は読まずにいられません。
今作は、わたしの中ではストンと落ちて、ちゃんと着地点が見えた気がします。
問題の『夜果つるところ』も読まなくちゃ…と思いますが、なんだかうまく乗せられたような気がしてしまいます。
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