え、立秋?
今朝は久しぶりに雨が降ったので、散歩中に吹く風がいつもよりほんの少し冷んやりしていた。
毎年、立秋過ぎると「ちょっとだけ秋を感じるよねぃ」と思う瞬間があるのだけど、今年はどうだろ。
『月とアマリリス』 町田 そのこ
物語の展開
北九州市の高蔵山で一部が白骨化した遺体が発見された。地元のタウン誌でライターとして働く飯塚みちるは、元上司で週刊誌編集者の堂本宗次郎の連絡でそのニュースを知る。
遺体と一緒に花束らしきものが埋めれられており、死因は不明だが大きな外傷はなかった。警察は、遺体を埋葬するお金のない者が埋めたのではないかと考えているという。
遺体の着衣のポケットの中には、メモが入っていた。部分的に読めるその紙には『ありがとう、ごめんね。みちる』と書かれていた。
遺体の背景を追って記事にできないかという宗次郎の依頼を、みちるは断る。みちるには、ある事件の記事を書いたことがきっかけで、週刊誌の記者を辞めた過去があった。
自分と同じ「みちる」という名前、中学生のころから憧れ、頑張り続けた記者の仕事。すべてから逃げたままの自分でいいのか。みちるは、この事件を追うことを決めた──。
冒頭、1人の男性と女性2人が遺体を埋めている場面から始まる。
やがてその遺体は発見され、残されたメモも大きな手がかりとなった。
この事件を追うことになったみちるが高齢で一人暮らしのはずの被害者の自宅を訪問すると、そこにはもう1人の女性の遺体が。
そして、被害者の家にはほかにも同居していた人物がいるらしい。
真相を追ううちに、彼らのそれぞれの背景や複雑な関係が浮き彫りになっていく。

読み終えて
ミステリー系大好きなわたしにとって、冒頭からゾクゾクの展開ではないか。
ただ、いろいろと手掛かりを残しすぎなのでは?
すぐに逮捕されるのでは?
なんて思ったけど、そういう犯人探しの話ではなく、人間ドラマという感じ。
犯行に手を染めた3人の関係性や家族関係、友人関係、社会性、それらが深く掘り下げられていく。
また記者であるみちるの親子関係や、彼女に協力する井口が抱える問題も考えさせられるものがある。
仲良しに見えた友達同士でも
「ひとりで生きてく力もないアホな子がこれから先どんな風になっていくのかなって興味本位で眺めてただけ」(p.168)だったり。
「ひとはひとで歪むんよ。その歪みをどこまで拒めるかが、自分自身の力。私は無力でバカやった。いつも、歪みを受け入れることが愛やと思ってたし、そうすることで愛されようとしてたんよ」(p.356)
こういう言葉を聞くと本当に切ない。
年代的に親の立場で見てしまうのでね。
なぜ子どもに正しく愛情を伝えられなかったのかと、そっちの方に考えがいってしまう。
「けれど、ひとはひとによって、まっすぐになることもできる。強さから輝きを分けてもらい、自分の糧として立ち上がることができる」(p.356)
みちるにも井口にも希望の光が見える終わり方だった。
ズーンと、厚みのある作品だった。
余談だけど、表紙の花はどう見てもアマリリスではないような気がして…。
AIによると
町田そのこさんの新作小説「月とアマリリス」の表紙には、石川賢治さんの写真集「月光浴 青い星」に収録されている「ジャスミン」という作品が使われています
ああ、そうでしたか。
納得。
♫〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうかステキな1日を!