【シニアの本棚】『いつか月夜』|いつも月夜に米の飯
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【シニアの本棚】『いつか月夜』|いつも月夜に米の飯

4.0
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いつも朝6時半過ぎにゴミ出しに行くのだけど、この時季はちょうど夜明け前で、毎回オレンジ色に染まった素敵な空を見ることができる。
いい気分だ。

さて、ことし2冊目は推しの作家さん、寺地はるなさんの作品。

会社員の實成は、父を亡くした後、得体のしれない不安(「モヤヤン」と呼んでいる)にとり憑かれるようになった。
特に夜に来るそいつを遠ざけるため、とにかくなにも考えずに、ひたすら夜道を歩く。
そんなある日、会社の同僚・塩田さんが女性を連れて歩いているのに出くわした。
中学生くらいみえるその連れの女性は、塩田さんの娘ではないという……。
やがて、何故か増えてくる「深夜の散歩」メンバー。
元カノ・伊吹さん、伊吹さんの住むマンションの管理人・松江さん。
皆、それぞれ日常に問題を抱えながら、譲れないもののため、歩き続ける。
いつも月夜、ではないけれど。 (Amazonより)

主人公實成と、彼の同僚で40代か50代の女性 塩田さんの会話が興味深かった。
塩田さんの言葉が「グサッと」ではなく「チクチク」刺さって共感できるところが多かった。

例えば

  • バレンタインデーが茶番だということ
  • 「無理しないで」と言う實成に対して「ちょっと無理しなきゃいけない時って、いっぱいあるよ、生きてると」と返すところ

    わたし自身「生きてるとちょっとは無理しなくちゃね」と思っているので、人には「無理しすぎないで」とか「頑張りすぎないで」と言うようにしている。
    ヘンなこだわりかもしれないけどね。
  • 「わたしがおかしなこと言うやつに合わせて行動を制限しなきゃならないの、どう考えてもおかしいもん」
  • 「可能性が少ないって、もう何者にもならなくていいって、自由だね」

    今までの自分の人生を振り返ってみると、たぶんいろんな可能性があったんだろうなと思うことがある。
    結局何者にもなれなかったなーと思うこともあるのよ。

    でも、考えてみればこの歳になるともう何者にもならなくていいってことなんだと、ちょっと救われた気分だ。

    いや、今さら何者かになろうと思ってたわけじゃないけど。
今朝の空

「いつも月夜に米の飯」は、實成が小学生の頃の宿題で提出した諺だそうだけど、わたしは生まれてこの方、この言葉を聞いたことがなかった。

実用日本語表現辞典によると

不足の無い生活のこと、あるいは満足な生活を願っても実際はそうはいかないことを意味する。
「いつも月夜に米の飯」は、昔は電気が無いため夜は真っ暗で、また白米は庶民にとってとても貴重な食べ物だったことから、月の光で明るい夜に白米を食べられるような生活は庶民の理想だったことに由来する

だそうだ。

深夜の散歩メンバーが、それぞれ背負っている荷物を少しだけ軽くして、それぞれの方向に歩き始める。
「いつも月夜」はあり得ないけど「いつか月夜」は必ず訪れる。

♫〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうかステキな1日を! 

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