『鳥啼き魚の目は泪』 宇佐美 まこと
物語の展開
駆け出しの造園設計士・高桑は大学の卒論で作庭師・溝延兵衛と、彼の代表作となったある庭を取り上げて以来、長年にわたり取り憑かれ続けていた。
武家候爵・吉田房興が兵衛に依頼したもので、定石を覆す枯山水を作るために、大きな池が埋められていた。その池からは、白骨死体が見つかっていた――。
昭和初期。限られた時代を生きたある華族の哀しみと、異能の作庭師の熱情が静かに呼応する「美しい庭」の誰も知らない物語。(Amazonより)
冒頭、何か大変なことが起きたと思わせる描写から始まる。
そこから物語が展開するのかと思いきや、場面は変わって、華族である吉田家の物語が奥様付きの女中トミの視点から語られていく。
溝延兵衛に作庭を依頼した房興は、兵衛とともに庭づくりに没頭する。
兵衛は房興の妻韶子にも影響を与え、韶子が徐々に変わっていく。
韶子と兵衛の心は響き合い、お互いを思い合っているように見えるが踏み込むことはない。
池から見つかった白骨死体の身元は?
事故なのか殺人なのか。
その謎が明かされた時、吉田家にはさらなる悲劇が起こる。
読み終えて
物語の入り口は現代の造園設計士 高桑が取り憑かれている庭ですが、大部分がその庭にまつわる武家侯爵吉田家の話です。
家を守ることが宿命づけられた華族の思いや暮らしぶりをトミの視点から見ることができます。
それもなかなか興味深いのだけど、読み手としては「あの白骨死体は? 誰? 殺されたんだと思うけど、誰に?」
それがいつ明かされるんだろうと気になって気になって…。
ところがそういう謎解きの物語ではなく、後半でいきなり怒涛の種明かし的な説明。
個人的にはこういう展開はあまり好みではなく、ちょっと興ざめしたのですが…。
そして修羅場となり冒頭の場面へと繋がるわけです。
そこまでだと「なんだかなー」でしたが、エピローグの令和5年の描写がよかったです。
ドローンで庭を上から見ると鳥の形のようになっている。
韶子が兵衛との最後の茶席で口にした芭蕉の句を、兵衛が汲み取って形造ったということですね。
そして「アレが見つかるのでは…」と思いながら読み進みます。
見つかったアレは詳しく調べられることはないのでしょうか。
何十年も前のことだもの、血液反応などは出ないのでしょうか。
そんな含みを持たせた終わり方でした。
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今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
ステキな1日を過ごされますように!