『正体』 染井 為人
映画化されると聞いて読んでみた。
物語の展開
拘置所に収監されていた少年死刑囚、鏑木慶一が脱走した。
彼は、18歳のときに一家3人を殺害した罪で死刑判決を受けていた。
- プロローグ 脱獄から1日
高校3年生の酒井舞は4月から念願だった東京での一人暮らしを始めることで希望に燃えていた。
少年死刑囚が脱獄したこともどこか遠い話で興味がなかった。 - 第1章 脱獄から455日
有料老人グループホームアオバでパート職員として働くことになった桜井翔司。
要領がよく飲み込みも早い優秀な職員で、利用者にも人気がある。 - 第2章 脱獄から33日
日雇い仕事の飯場で働いている野々村和也。
ある日、現場で66歳の平田が怪我をしたが、労災もおりず平田は理不尽な扱いを受けていた。
そのことを、ベンゾーと呼ばれている遠藤に相談する。
遠藤は仲間とは一線を引き単独で行動することが多いのだが、法律に長けているようだ。 - 第3章 脱獄から117日
メディア会社のチーフディレクターをしている安藤沙耶香、35歳。
彼女の会社では在宅ライターをたくさん抱えている。
先月入った新人ライターで、小説家を目指しているという爽やかなイケメン那須隆士と面談する。
- 第4章 脱獄から283日
痴漢の冤罪により居場所をなくした元弁護士渡辺淳二は長野県の旅館で住み込みで働いている。
同僚の袴田勲は若いがとても落ち着いていて、旅館で起きた出来事に冷静に対処し、淳二の痛みに寄り添ってくれる好青年だ。
- 第5章 脱獄から365日
パン工場で働く主婦近野節枝。
寝たきりの義父を抱え、全く何もしない夫に不満と苛立ちを募らせている。
そんな節枝は友人に誘われ新興宗教に入会する。
そこで出会ったのが久間道慧という青年で、節枝と同じ職場で働くことになる。 - 第6章 脱獄から488日
酒井舞は東京の美容専門学校に入学したものの、思っていたところとは違い実家に戻っていた。
そして介護士としてグループホームアオバに勤めることになった。
そこには頼りになる先輩桜井翔司がおり、彼女は次第に桜井に惹かれて行くのだが、彼は入所者の1人と毎晩のように話し込んでいて、訳ありのように見える。 - 第7章 正体
読み終えて
実際にあったあんな事件やこんな事件を彷彿とさせるような物語だった。
脱獄してから1年4ヶ月あまり。
鏑木慶一はいろいろな職場で名前を変えて働いていた。
仕事ぶりは真面目で誠実、人との距離をとってはいるが、頼まれたことにはきちんと応えている。
彼のことを悪く言う人はいない。
なんとなく、旅館のあたりで「もしかして?」という気持ちになり、それは第6章で確信に変わる。
グループホームアオバの事務員四方田はすぐには警察には連絡しないと言っていたのに…。
彼が通報した気持ちは、おばちゃんなりに理解しているけどね。
鏑木の再審請求のために職場で一緒だった人たちが集まってきたのも納得できる。
とても引き込まれて、先が気になってほぼほぼ一気読みだった。
だけど、だけど…。
あれはダメでしょ。
わたしって、やっぱりベタな勧善懲悪ものが好きなんだなーと、改めて自覚した次第。
間違いはきちんと正されなければならない…のだ。
いや、正されたのかもしれないけど…、わたし的にはスッキリしなかったなー。
評価が1つマイナスだったのはそこ。
○んじゃダメよ。
最後まで読み終えて一番びっくりしたのは
本文中に、「人夫」「日雇い」「飯場」など、特定の職業に関して不快・不適切をされる呼称が使用されています。また、周囲との接触を避ける登場人物を「コミュ障」としたり、認知症に罹患することを「ボケる」、児童養護施設を「いわゆる孤児院だった」とするなどの表現も使用されています。(中略)差別の助長を意図するものではないことを、ご理解ください。(編集部)
この文章がつけ加えられていたことだ。
こんなことエクスキューズしなくちゃいけないのか…。
小説なのに…。
物語の流れより、結末より、なによりこの部分が一番印象に残ってしまったよ。
ちなみに、映画を見るつもりはありません。
自分の頭の中のイメージを大切にしておきたい、そんな作品だ。
今知ったんだけど、一昨年WOWOWでドラマになってたんだね。
WOWOW解約しちゃってたわ。
亀梨和也くん…。
ちょっと「ん〜〜」だけど、アマプラでやってたら見てみようかしら…って、どっちやねん。
♫〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうかステキな1日を!