『クロコダイル・ティアーズ』 雫井脩介
久しぶりの雫井さんです。
タイトルの「クロコダイル・ティアーズ」は「嘘泣き」という意味だそうです。
ワニは人間を誘き出すために嘘の涙を流すと言われているらしいです。
嘘の涙を流して人間を誘き寄せ、食べちゃうってことですよね。
読み終えてからこの言い伝えを聞くと「なるほど〜〜」という気がします。
物語の展開
老舗の陶磁器店を営む貞彦とその妻暁美。
彼らの息子康平は3代目を継ぐことになっていたのだが、妻の想代子が子供と実家に帰っている間に殺害されてしまう。
犯人は想代子の元カレだった。
裁判が進み判決がおりると、被告は法廷で「想代子に頼まれたのだ」と叫ぶ。
その時から貞彦と暁美の間に想代子に対する疑念が湧き起こる。
2人は、若くして未亡人となった想代子に家を出てもいいと言うが、彼女はこの家に残りたいと言う。
貞彦は、孫に跡を継がせたいという思いもあり、想代子を信じようとするのだが、姑の暁美はますます疑いを深めていく。
体調を崩して塞ぎがちになった暁美に代わって、想代子が家事も店番も嬉々としてやっているように見える。
貞彦も何かと想代子を気遣い取り立てようとしている。
そんな時、店の倉庫に入っていたはずの著名な陶芸家の貴重な作品が紛失する。
盗まれたのか。
誰が、なんのために?
読み終えて
完全にハマりました。
嫁の想代子が怪しくて怪しくて。
絶対魂胆があるに違いない。
「もし普通の善良な人だったら、逆に笑えるわ」なんて思いながら、どんどん読み進みます。
物語は貞彦と暁美の視点から描かれているのですが、その間に想代子の思いは全く窺い知ることができません。
彼女が何を考えているのかさっぱりわかりません。
暁美と一緒になって疑いの闇に落ちていくような感じです。
心理サスペンスというんですかね。
なんとなく不気味で気持ち悪い感覚に包まれます。
読者の立場によって、かなり違った受け止め方をするかもしれないなと思いました。
わたしは年代的に姑の立場なので、暁美さんに入れ込んでしまいましたが。
想代子と同じ年代の人にとってはまた違うかも。
最後はスパッと場面が切り替わり、想代子の思いが描かれます。
おもしろかったです。
ただ、心がスカッと晴れたわけではありません。
本当に純粋で善良な人だったのか、それとも上手くやってのけたのか…。
これもまた、人によって感じ方が違うかもしれませんね。
あなたはどう思われるでしょうか。
もし「何か読む本ないかなー」と思われているならオススメです。
タカハラお気に入りの雫井さん作品
♫ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます。
応援していただけるとさらに喜びます♡
にほんブログ村