【シニアの本棚】『ラブカは静かに弓を持つ』:音楽教室と著作権
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【シニアの本棚】『ラブカは静かに弓を持つ』:音楽教室と著作権

4.5
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本屋大賞のノミネート作品ということでタイトルだけは知ってました。
表紙を見ることもなく、弓というのは弓矢の弓だと思っていて、勝手に戦争がテーマの作品だろうと思っていたタカハラです。
不覚でした。

チェロの弓だったんですね。
そうとわかれば読まないわけにはいきません。

図書館に予約して何ヶ月待ったでしょうか。
やっと順番が回ってきました。

物語の展開

主人公は全日本音楽著作権連盟(全著連)の職員橘樹。
彼は小さい頃からチェロを習っていたが、ある事件がきっかけで楽器から離れていた。

その樹に上司から命令が下る。

全著連と裁判で争っているミカサ楽器の音楽教室に生徒として潜入するようにとのことだ。
2年間、個人レッスンで講師と交わされた会話や演奏した曲をすべて録音し、証拠として提出するという任務を課せられた。

仕方なくレッスンに通い始める樹だが、人懐こく屈託のない講師や同じクラスに通う仲間と繋がりができていき、そこに居場所を見出すようになる。

チェロに対するトラウマを抱えていた樹だが、だんだん心が柔らかくなって不眠に悩まされることもなくなり、日常生活が充実したものになっていった。

そしてもうすぐ潜入期間の2年が終わろうとしている。
樹は証人として出廷し、今まで録音したデータが証拠として使われることになるはずだ。

自分に目をかけて丁寧に指導してくれた講師や、心地いい仲間たちを裏切ることになる。
良心の呵責に苛まれ、追い詰められた樹がとった行動は…。

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読み終えて

全著連と音楽教室の問題が起きたのは2017年のことだそうで、このニュースを聞いた時にはわたしも「JASRAC、とんでもないこと言い出したな」と思ったものです。

今はなんの関係もないけど、やっぱり音楽教室側に立ってしまいます。

演奏会などで著作権使用料を払うのはわかるけど、音楽教室でのレッスン時までというのは納得いかないじゃないですか。

あ、今はそういう話ではなく、この物語についてですね。

樹がまたチェロに目覚めて仲間とも打ち解けていく、彼の心が変化していく様子が描かれていて「よかったなー」と思う反面、彼の立場を考えると切ない。

真剣にチェロに向き合いたいという思いと職務との板挟みになって、罪悪感に追い詰められていく樹。
なんだか身につまされる展開でした。

彼の任務の顛末は「え?」という意外性もあり、おもしろかったです。

音楽教室の仲間はブレませんでしたね。

チェロ、いいよねぃ。
いいよねぃ、音楽。

じんわり、じんわり。
涙ポロポロでした。

「戦慄きのラブカ」という曲が実際にあるのか、確かめたのは言うまでもありません。
ないそうです。残念。
聞いてみたかったです。

ちなみに、音楽教室に全著連の職員が潜入調査したというのは事実だそうです。
また最高裁は、生徒の演奏には著作権使用料は不要だが講師の演奏には必要という判決を下したそうです。

https://www.ktv.jp/news/feature/221024-1/

レッスン中に生徒に弾いて聞かせるのは必要なことだと思うけど、それを使用料と言って請求されるのって、なんだかなーと思いますが。

指導者である浅葉の「演奏するときに情景をイメージしているか」という言葉はちょっと刺さりました。
過去の自分を振り返ってみて、具体的な映像を思い浮かべながら弾いたことがあるだろうか…と。

ないです。
音符追うのに精一杯。

著作権問題や樹の心情だけでなく、いろんなことを考えながら読みました。
余韻の残る深い作品でした。

♫〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます ^_^
どうぞ、よい1日を!

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