【読書】『淀川八景』藤野恵美:なんでもないけど意外と深い

3.5

藤野恵美さん、初めましてです。
失礼ながら全く存じ上げませんでした。
13年プラス2年間、大阪で暮らしていた者としては「淀川」と聞くと、無条件に読んでみたくなるものです。

物語の展開

淀川周辺で起きる8つのエピソードから成る短編集だ。

  1. あの橋の向こう:親から虐待されて育った姉妹のお話。2人が話している河川敷にはザリガニ釣りをしている小学生の姿が見える。
  2. さよならホームラン:父が再婚し、再婚相手の連れ子である弟ができたあたしは、淀川の河川敷に野球の練習を見に行くのが習慣になった。しかし、2人は数年後離婚することになる。
  3. 婚活バーベキュー:父の病気がきっかけで「父に孫の顔を見せてあげたい」という思いから婚活を始める私。淀川で開かれるBBQパーティーに行くのだが…。
  4. ポロロッカ:大阪湾から琵琶湖まで淀川を歩いて遡ってみようと思い立った男性。過去を思い出しながらひたすら歩く彼の中に、ある思いが湧き上がり溢れ出す。
  5. 趣味は映画:高校2年で転校し、自己紹介で「趣味は映画鑑賞です」と言ったばかりに、同級生が自主制作している映画の主演をすることになってしまった「俺」。
  6. 黒い犬:愛犬を亡くし離婚した「私」は河川敷で黒い犬に出会う。
  7. 自由の代償:「やりがいも、大きな喜びも、ひとが羨むような幸せもいらない。ただ、何者にも縛られず、好きなように生きていたい。そのために金を貯めた」という中年男性が、ある日女子高生を助けることになり…。
  8. ザリガニ釣りの少年:いじめられている同級生、須野木にやり返す術を教えるべく出かけていく「俺」。しかし本人はまったく意に介さず1人でザリガニ釣りをしている。

読み終えて

8編は独立したエピソードだけれど、その中に別のエピソードの風景が垣間見えて「おぉ」と気づく。

例えば、琵琶湖を目指している男性が少年野球やバーベキューをしているのを見ながら淀川沿いを歩いているとか…。
こういう構成は好きだな。

大きな事件が起きるわけではない。
それぞれの主人公は、心にちょっとした塊のようなものを抱えているのだけど、最後にはそれが溶けていくようなお話だった。

特に4「ポロロッカ」は最初、彼の奥さんの言動に不可解なものを感じていたのだけど、もちろんタカハラの個人的感覚だけど、「そういうことだったのか」という思いに至る。
ひとりで歩き、考えたことで抱えていたものがはっきりと見えてきたんだなという印象だ。

3の婚活バーベキューもちょっと切ない。
未婚の人が生きにくさを感じない世の中になってほしいと思うわ。

8のザリガニ釣りをしていた小学生は1の姉妹が見た子かもね。
須野木君の本当の強さを見たような気がして、おばちゃん、またホロリ。

やはり実体験のある場所が舞台だと、知ってる地名や駅名が出てきて親しみを感じるよね。
そして、淀川のほとりのマンションで暮らしている娘のことを、ふと思ったりもする。

一見なんでもないような出来事だけど、底に潜んでいるものが見える、意外と深い話だった。

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