『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー
わたしも3人の子どもを育ててきたのだけど、今でいうワンオペだったので毎日必死だった。
子育て中の記憶がほとんどないのは、そのせいかもしれない。
それほど深く考えてたわけじゃないけど、一応子育て方針とか、どんな人になってほしいとか、そういう思いを持ちながら子どもたちと接していた。
だけど、その結果はすぐに現れるわけじゃないもの。
10年以上も経って、「あぁ、あの時のアレがいけなかったんだろうか…」とか考えたりする。
今でもたまに何十年も前のことを思い出して、「あの時は可哀想なことしたなー」と思うこともあるわけで…。
そんなことを思いながら読んだ本がこちら。
以前、ある雑誌の「ひとり旅に行きたくなる本」という記事でお勧めされてた本だ。
これを読んで旅がしたくなったかと言われると、そんなことはなかったけど。
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバグダッドからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる…女の愛の迷いを冷たく見据え、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。 (Amazon内容紹介より)
当初はアガサ・クリスティーは、これをミステリーと思って読んだら読者が失望するだろうといって、別の名義で出版していたそうだ。
物語の展開
冒頭から母親で主人公のジョーンがどんな人物であるかというのは推測できる。
娘のところから帰る途中、交通事情により、ある場所に予定以上に長期間滞在することになったのだが、そこで過去を思い出す以外にすることがないような時間を過ごす。
その回想の描写から彼女がどのような妻であり母であったのかが、じわじわと、でもはっきりと伝わってくる展開だ。
読んでるうちに、自分はどうだっただろうかなんて、ジョーンと比べてしまった。
そして、彼女は自分のしてきたことの愚かさに気づき、心を入れ替える決心をする。
折しも鉄道は復旧し、彼女はロンドンに帰れることになる。
ここで、読者はちょっと明るい気分にさせられるのだけど…。
結局、そうなのか?
夫のロドニーもどうかと思うけどね。
優しいというより、ちゃんとジョーンと向き合うことから逃げてるだけだよね。
読み終えて
すっきりとした読後感とは言えないけど、まぁそういうものかもね、結局頭で考えたようには変われない、みたいな感想を持った。
でも、深かったわー。
ジョーンも決して悪気があったわけではない。悪気を持って子育てしてる母親なんていないだろうし。
自分の価値観とか善意の押し付け、それに全く気づいていない、自分を省みることをしていない。
ある意味怖い。今の言葉だと「毒親」と言えるのかもしれない。
さすがミステリー作家のアガサ・クリスティーの作品だなーって納得したわ。
この作品が出版されたのは1944年というから驚き。
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