【シニアの本棚】『誰かがこの町で』:「安全で安心な町」に潜む怖さ
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【シニアの本棚】『誰かがこの町で』:「安全で安心な町」に潜む怖さ

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『誰かがこの町で』 佐野広実

表紙のなんとなく怪しい雰囲気に惹かれて買った 借りた本だ。

物語の展開

真崎が勤める弁護士事務所に若い女性が訪ねてくる。
彼女は、事務所の所長である岩田の大学の同期生の娘だと言い、両親と兄は失踪し、自分だけが捨てられて施設で育てられた。
家族がどうなったのか調べてほしいと依頼する。

一方、時間軸は遡るが、人もうらやむ瀟洒な住宅街「美しが丘ニュータウン」に住む木本家では6歳の長男が行方不明になり、翌日死体で発見されるという事件が起こる。

しばらく2つの話が並行して進んでいくのだけど、それが重なる瞬間が訪れ、そこから物語が本格的に始動するという感じだ。

美しが丘ニュータウンは「安全で安心な町」を目標に掲げる地区長のもと、防犯係や風紀係などを設置して町の環境維持に取り組んでいた。

町内にずっと住んでいる人々は町の異様さに気づかず「ずっとそうだったから、それが当たり前」という考えで暮らしている。

そこへ引っ越してきたある家族の主婦が「おかしい」と声を上げる。
そんな異分子を排除しようとする町の人々。

本当に不気味で気持ちの悪い状況が描かれていく。

「安全で安心な町」をつくることが目的だったはずなのに、いつの間にか「安全で安心な町であるという評判」を守ることが目的になっていった。「この町に悪い人がいるわけがない、悪いことが起こるわけがない」という洗脳状態。

閉鎖的な地域で、住人たちは人と違うことを恐れ互いに忖度し、同調圧力を圧力とも思わず、当たり前になっていく。
ある意味カルト的だ。

そして住人たちはあり得ない行動に走っていく。

読み終えて

コロナ禍の今の状況に通じるものを感じた。
作者はそれを意図して書いたのではないだろうかとも思う。

ミステリーという感じはしないけど、そら恐ろしい小説だった。

真希ちゃんが新しい1歩を踏み出してくれたのが唯一の救いだ。

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